御挨拶

−特定非営利活動法人 設立に寄せて−

 いつもお世話になり誠に有難うございます。
 平成11年に蒸気機関車9600形59647号機の修復を契機に『汽車倶楽部』を発足してから16年が過ぎ、活動の輪も広がって参りました。この度、特定非営利活動促進法第12条第一項の規定に基づき、平成28年3月31日に特定非営利活動法人の認証を頂き、平成28年4月より『特定非営利活動法人汽車倶楽部』として活動致して参ります。

 わが国のエネルギー問題を語る上で決して忘れてはならないのは、かつて一大エネルギーの源として存在した炭鉱です。特に石油エネルギーが台頭してくるまで、石炭エネルギーは日本の産業を根底から支えた花形産業でした。その中にあって、この筑豊地区は、石炭産業において華々しい脚光を浴びました。
 ところで、石炭輸送の変化もその後の筑豊における石炭産業の発展に大きく寄与していました。即ち、これまで「川ひらた(五平太船)」と呼ばれる船が、遠賀川を大動脈としてその一翼を担っていましたが、鉄道の普及により、これまでの水上輸送から鉄道輸送へと劇的に変化していきました。この様に鉄道輸送が、筑豊における石炭産業の発展に著しく寄与したことはまぎれもない事実と言えます。
 しかし、わが国エネルギー政策の転換によって炭鉱は合理化を余儀なくされ、昭和30年代後半から筑豊の炭鉱は次々に閉山へと追い込まれていきました。しかも石炭産業の衰退は、これまでそれを動力として人的・物的にも陸上輸送の主役としてその役割を果たした蒸気機関車の廃止へと繋がっていくことになります。その後は、エネルギー革命の進展により、ディーゼル車から電気機関車へと進化、今ではリニアモーターカーの実用化が現実のものとなっています。このような状況の中で、かつて筑豊を中心として石炭産業が盛んであったことや、まして石炭で列車が動く時代があった事を知る世代が少なくなり、世はデジタル社会化しているのが現状です。それ自体は人類の発展にとって喜ぶべき事ではありますが、それと同時にわが国発展の歴史が忘れ去られ、もはや過去の「遺物」としてしか捉えられていない面があるのも事実です。
 ただ、これまで風化の一途を辿るかに見えた「遺物」が世界の歴史遺産として認定された事は、今一度、自分たちが生まれ育った国土を見直し、それに誇りを持ち、未来に継承していこうとする機運の高まりにつながり、大変意義あることと思っています。
 そこで、これまで歴史を彩ってきた鉄道車両の修復をはじめ、石炭産業に関わった歴史遺産を管理・保存・活用する事で、大人から子供までその歴史遺産に触れる場の提供が出来ると共に、まちづくりを行う一助ともなり、併せて観光の振興にも役立つものと考えます。と同時に、情報発信基地としての役割も併せ持っていると自負しています。現在すでに遠賀郡芦屋町・中間市・直方市に静態保存されている鉄道車両の修復を手掛け、定期的に保守管理を実施しております。それ以外にも粕屋郡志免町にあった蒸気機関車を直方で修復し、大分県玖珠郡玖珠町へ移設/直方市内の全小学校において直方市教育委員会や直方市石炭記念館との連携の中でカリキュラム化された社会科見学/九州鉄道記念館やJR九州のイベント協力等、少しづつですが、その成果が見えつつあります。しかし、行政との連携や永続的な事業の展開の面から考えますと、個人の力量には限界があります。特に行政側においては、様々な契約行為が発生する為、法人格の取得が必須となります。我々の活動は営利を目的とするものではないため、会社組織には馴染めません。そこで、公益を目的とする特定非営利活動法人を設立し、広く子供たちを含めた社会教育の推進やまちづくり・ひとづくり、そして学術・文化面での貢献に寄与したいと決意致しました。

「古き良き時代を、次世代へ・・・」をテーマに、我々の活動が何十年か先に何かしらお役に立つ事を夢見て頑張りたいと思います。今後とも『特定非営利活動法人汽車倶楽部』へのご理解ご協力の程 どうぞ宜しくお願い申し上げます。
                      平成28年4月吉日
                       特定非営利活動法人汽車倶楽部
                                                         理事長 江口 一紀

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